鉱毒対策事業
山形盆地の南端に位置する上山市は、年間降水量が約1,150mm(過去5年平均、中心市街地)とすくないため、農業用水の確保には歴史的にも大変な努力を重ねてきた。昭和10年代からの蔵王川の酸性水による農業被害防止が大きな課題であり、その対策事業への取組を紹介します。昭和54年度に着工し、平成4年度に完成しております。
蔵王山系からの灌漑用水に依存している市内南東部地域の約550ヘクタールの水田は、蔵王火山の活動や硫黄鉱山の採掘などから発生したと見込まれる強酸性の鉱毒水のため、昭和10年代から鉱毒被害が顕著になってきた。
早春の仙人沢 蔵王沢は酸性水、仙人沢の真水を合流前で取水する
明治初年 | 蔵王鉱山露天掘りで硫黄採掘始まる。 |
昭和14、 15年 |
熊野岳西1.5キロメートルの小火口ができ、ガスが噴出し鳥地獄に新しい噴気孔ができる。 |
昭和11年 | 蔵王鉱山(硫黄)が再開され、昭和16年には年産8,500トンとなり終戦まで続く |
昭和14年 | 須川の毒水化を県が調査開始。慣行水利権調書には昭和17年から鉱毒水が顕著になったとの記録 |
昭和22年 | 蔵王鉱山再開し昭和38年に閉山される。 |
昭和34年 | 山形市と鉱毒問題を県に陳情、県費調査開始 |
昭和48年度~51年度 |
1次調査 |
昭和52年度~53年度 | 2次調査 |
昭和54年~平成5年3月 | 上山東部地区県営鉱毒対策事業採択、工事実施、竣工 |
水質・被害状況
蔵王川は、蔵王沢及び仙人沢を源とし、蔵王沢は熊野だけ西側山腹の硫黄、硫化鉄鉱の鉱化帯からの湧水によってPH1.8~PH2.0を示し、仙人沢でもPH3.1~3.8の強酸性となっていた。下流の水田は、昭和48年から52年までの被害調査では平均25%の減収割合であった。
県営鉱毒対策事業
本事業は、仙人沢の真水を潅漑用水として分離し利用するための事業でありますが、仙人沢の水だけでは、全体の必要量を充足できないことから、生居川に250万立方メートルのダムを作って貯水することによって、全地域の真水潅漑が可能となりました。
主な工事は次のとおり実施されました。
- 仙人沢頭首工(とうしゅこう、水の取入口)堰高2.2m、堰長20.0m、附帯施設
- 用水路工 延長 16.6km(一部トンネルを含む)
- 生居川ダム 堤高 47.8m、提長 313.7m、有効貯水量 247万立方メートル、ロックフィルダム
総事業費 177億円
仙人沢上流の左又沢
(右岸の崩落地から酸性水が流出し仙人沢の酸性化が懸念される)
生居川ダム(花森湖)